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大阪地方裁判所 昭和47年(ワ)3954号 判決

原告 大野二郎

〈ほか六名〉

右七名訴訟代理人弁護士 河村武信

同 海川道郎

同 桐山剛

同 鈴木康隆

被告 社会保険診療報酬支払基金

右代表者理事長 今村譲

右訴訟代理人弁護士 松本正一

同 橋本勝

同 森口悦克

同 大崎康

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、原告ら

「被告は、原告大野二郎に対し金三六、七七四円、同山田孝司に対し金二九、一四八円、同長谷川利明に対し金一二、九九四円、同橋本巌に対し金二五、七一四円、同西野敏幸に対し金三一、五七六円、同久保正弘に対し金二三、九〇四円、同奥田和三に対し金八、〇三九円、および右各金員に対する昭和四七年九月一〇日から完済まで年五分の割合による金員を各支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言。

二、被告

主文と同旨の判決。

≪以下事実省略≫

理由

第一、左記の事実はいずれも当事者間に争いがない。

一、被告は社会保険診療報酬支払基金法(昭和二三年法律第一二九号)により設立された社会保険診療報酬の審査およびその支払いの業務を行なうことを目的とする特殊法人であり、その主たる事務所を東京都に、従たる事務所を各都道府県ごとに設置し、大阪府においては大阪市に右従たる事務所として大阪基金を置いている。

一方原告らはいずれも昭和四〇年一月以前から被告の従業員として大阪基金に勤務するとともに、全基労の組合員であって、全基労大阪支部に所属するものである。もっとも、原告奥田は昭和四五年五月退職し、現在被告の従業員ではない。

二、ところで、被告は、全基労大阪支部がその発行にかかる日刊紙「鉄筆の仲間たち」を印刷するために、被告の施設である大阪基金事務所を許可なく使用しているという理由で、同支部に対し昭和四一年一〇月一五日以降右事務所での右印刷を禁止するとともに、同年一二月二三日、当時同支部の支部長であった原告橋本、および同じく書記長であった原告西野に対し、右原告両名が被告の度重なる警告にもかかわらず、これを無視し、同年一〇月一五日から同年一二月九日頃までの間ほとんど毎日のように右日刊紙を印刷するために、被告の使用許可を受けないで右事務所を自ら使用し、あるいは同支部所属の組合員にこれを使用させたという理由で、各停職五日間の懲戒処分および三か月間の昇給延伸措置を行なった。

さらに被告は、同じく同月二三日、当時同支部の執行委員であった原告久保に対し、同原告の勤務状況が著しく不良であり、また上司に対する態度が反抗的であるという理由で、停職二日間の懲戒処分および三か月間の昇給延伸措置を行なった。

三、しかるところ、全基労大阪支部は、被告の前記二の各行為は不当労働行為に該当するという理由で、昭和四二年六月六日大阪府地方労働委員会に対し、被告および大阪基金を相手方として、その印刷妨害の排除および前記各懲戒処分、昇給延伸措置の取消を求める旨の救済命令の申立(同年(不)第二八号事件)をした。

四、同委員会は、全基労大阪支部の右申立に基づき、同年七月一四日以降数十回にわたる審問期日を重ねた結果、昭和四五年三月一三日、右印刷妨害および原告橋本、同西野、同久保に対する右各懲戒処分、昇給延伸措置は不当労働行為に該当するとして、右印刷妨害を禁止し、かつ右各懲戒処分、昇給延伸措置を取り消す旨の本件救済命令を発した。そして、右命令はなんら不服申立のなされることなく確定し、被告は同年四月一日右各懲戒処分を取り消すなど右命令の履行を了した。

第二、そこでまず、原告ら主張の不法行為の成否について順次判断する。

一、印刷妨害の点について

1、被告がその企業施設の管理のために、昭和三九年八月一日本件管理規程を設け、被告の職員が業務以外の目的で被告の施設を使用しようとするときは、その都度予め管理者に使用許可申請書を提出してその許可を受けなければならない旨(ただし、休憩時間中に所属長のあらかじめ指定した施設を休憩またはレクリエーションのため使用する場合はこの限りでない。第四条)、また、管理者は当該施設の使用が被告の業務の遂行を妨げず、かつ施設の秩序の維持または災害の防止に支障がないと認められる場合にかぎり右使用を許可することができる旨(第五条)をそれぞれ定めていることは当事者間に争いがない。

2、しかるところ、≪証拠省略≫を総合すると、次のとおり認めることができる。

(一)、全基労大阪支部(組合員数約一九名)はいわゆる第二組合たる基金労に対抗して、その団結を維持し、かつ、同支部所属の組合員の士気昂揚等をはかる目的のもとに、日刊紙「鉄筆の仲間たち」を印刷(がり版印刷)して発行することを決め、大阪基金事務所二階事務室に右印刷用の器具類を持ちこんだうえ、昭和四〇年一月二五日その印刷、発行を始めた。そして、同支部組合員において、その後ほとんど毎日のように午前八時頃から始業時刻である午前八時四五分(ただし昭和四一年一一月以降は午前八時五五分)までの時間、昼食時の休憩時間、あるいは午後の休息時間に右事務室西側にある予備机を使用して右日刊紙の印刷を行ない、これにより右日刊紙の発行を続けてきた。

(二)、ところで、昭和四一年一〇月一五日午前八時過頃、当時全基労大阪支部の執行委員で右日刊紙の編集責任者であった原告久保が右予備机を使用していつものように右日刊紙の印刷を行なっていたところ、同じく当時大阪基金の庶務課長であった岩田昇がこれを見つけて同原告に対し、本件管理規程による右事務所使用の許可を受けないで右印刷をすることは禁じられているから、右印刷をするについてはまず右使用許可を受けるように、といって右日刊紙の印刷を阻止した。

(三)、そして、その後も右岩田らは、右同様右事務所の無許可使用は許されないという理由のもとに、同支部の組合員らによる右日刊紙の印刷を引続き阻止したので、同支部はこれに抗議するとともに被告側との間に種々団体交渉を行なった。ところで、右団体交渉の過程において、同支部は、その組合員が前記のとおり始業前等に被告の許可を受けることなく右事務所を自由に使用して右日刊紙の印刷をなしうることについては、すでに労使間に慣行が成立しているのであるから、大阪基金がいまさらのように右事務所の無許可使用を理由として右印刷を阻止する行動に出たことは、右慣行に違反し不当である旨を終始強調した。一方、これに対し、大阪基金側は、同支部のいうような慣行はなんら存在していないから、右日刊紙の右印刷についても当然本件管理規程による使用許可申請手続を遵守すべきであり、同支部がこれを履行しないかぎり右事務所の使用を認めるわけにいかない旨反論するとともに、同支部が右手続を履践さえすれば業務に支障のない限り右使用を認める方針であることを繰返し説明した。しかし、同支部がこれに応じなかったため、話合は物別れに終った。

(四)、以上のような状況のもとで、全基労大阪支部の組合員らは前記日刊紙を印刷するために、本件管理規程による許可をなんら受けることなく始業前等に引続き右事務所を使用していたので、大阪基金は同年一〇月二二日付書面をもって同支部の支部長であった原告橋本に対し、右事務所を許可なく使用して右印刷を行なうことは許されないから、直ちに右印刷用の器具類を右事務所から撤去されたい旨通告した。なお、大阪基金は、それとともに、一般職員に対し、同月二四日付書面をもって、右通告書を発した趣旨、および大阪基金としては、同支部の組合員らが右事務所を始業前等に使用することを頭から拒否しているわけではなく、本件管理規程による許可を受けてからこれを使用するよう申し入れているにすぎない旨の同基金側の基本方針を説明した。しかしながら、原告橋本らは右器具類の撤去申入れに応じようとはしなかったので、大阪基金は、同年一一月四日自らこれを撤去したうえ、これを右支部長である原告橋本のもとに送付し、そのため全基労大阪支部は、同月五日から八日までの間前記日刊紙の印刷をすることができなかった。

以上のとおり認められる。右認定に反する証拠はない。

3、右認定事実によれば、大阪基金は、昭和四一年一〇月一五日以日以降、全基労大阪支部の組合員らが始業前等に大阪基金事務所で前記日刊紙を印刷するのを阻止するとともに、同年一一月四日右印刷用の器具類を撤去し、そのため、同支部はその発行にかかる右日刊紙を四日間印刷することができなかったものというべきところ、大阪基金が右印刷の阻止ないし右器具類の撤去に踏み切ったのは、要するに同支部が本件管理規程に違反し、右事務所使用の許可を受けないで右印刷に従事し、かつ右撤去要求にも応じなかったことによるものであることが明らかである。

右につき、原告らは、全基労大阪支部が前記日刊紙の印刷のために右事務所を始業前等に許可なく使用しうることはすでに労使間に確立した慣行である旨主張し、この点は前記団交の過程においても前記のとおり同支部において強調していたところであるが、≪証拠省略≫中右主張に符合する部分は≪証拠省略≫と対比してにわかに採用し難く、他に右主張事実を認めるにたりる的確な証拠がない。もっとも、全基労大阪支部の組合員らが前記昭和四〇年一月二五日から昭和四一年一〇月一四日までの約一年九か月間に、右許可を受けることなく右事務所を使用して始業前等に前記日刊紙を印刷していたことは前叙認定から明らかなところであるけれども、右の事実から右慣行の存在をたやすく推認することはできない。けだし、≪証拠省略≫によれば、被告は前記のとおり社会保険診療報酬の審査およびその支払いの業務を営むものであるところ、大阪基金においては、右業務にかかる医療関係者からの請求明細書が常時一か月二〇〇万枚(金額にして約金六億円前後)ほど提出されていたが、これをまとめて収納する倉庫等がなく、これらの明細書類は大阪基金事務所の事務室内等においてあったため、その保管等の必要上、被告の職員による右事務所の業務外使用については、本件管理規程による許可申請手続を遵守することが強く要請されていたのであって、現に、第二組合たる基金労がその組合活動の一端として右事務所でビラ等を印刷するについては、始業前これを行なう場合を含めすべて従来から右管理規程による許可申請手続を履践していたのであり、また全基労大阪支部においても終業時刻後右事務所で右日刊紙を印刷する場合には、常に右許可申請手続を経由していたものであることが認められ、これらの事実に徴すれば、ひとり同支部が始業前等に右事務所で右日刊紙の印刷をする場合にのみ右手続を免除する旨の慣行が成立していたとはたやすく考えられず、またこのように考えるべき特段の合理的理由も存在しないからである。したがって、この点に関する原告らの前記主張は採用できない。

4、ところで、本件管理規程の実際の運用状況について検討してみるのに、前叙認定事実に、≪証拠省略≫を総合すれば、次のとおり認めることができる。すなわち、大阪基金としては前記のとおり全基労大阪支部が大阪基金事務所を使用するにつき、本件管理規程による使用許可申請手続を履践さえすれば、業務に支障のない限り右使用を許可する方針をとっていたのであって、現に同支部は、昭和四〇年一〇月以降一か年間に、組合集会その他業務以外の目的で大阪基金事務所を使用するために右管理規程による使用許可申請手続を一六七回行なったが、そのうち不許可となったのは僅かに八回だけにすぎなかった。しかも、前記日刊紙の印刷の場合を除いて、これまで被告の施設の使用許可をめぐって、被告と全基労または基金労との間で特段の紛争を生じたこともなかった。以上のとおり認められ、右認定に反する証拠はない。

5、以上認定の本件管理規程の存在、被告の施設である大阪基金事務所の業務外使用につき、被告が右管理規程による許可申請手続の履践を求める業務上の必要性、および右管理規程の実際の運用状況等をかれこれ考察すれば、前記のとおり大阪基金において全基労大阪支部に対し、同支部が前記日刊紙の印刷のために右事務所を使用するにつき、右許可申請手続を履践することを求めたのはけだし当然というべきところ、同支部がこれを拒否し右許可なく右事務所を使用して右印刷を続けたため、大阪基金としても右印刷の阻止等に踏み切らざるをえなかったものといわざるをえない。したがって、右は、大阪基金ひいて被告が、その施設である大阪基金事務所を管理する必要上、やむなく講じた措置であって、別段正当な管理権限の行使の範囲を逸脱してはいないものとみるのが相当であるから、結局違法性を欠くものといわなければならない。しかも、前記日刊紙は前記のとおり全基労大阪支部の発行にかかるものであって、その組合員たる原告らが発行しているものではないから、被告の右措置によりその印刷が一時できなかったからといって、特段の事情でもない限りこれが直ちに原告らの団結権を侵害するものと速断することはできない。そうすると、いずれにせよ被告が原告らに対し、その主張のような右日刊紙の印刷妨害による不法行為責任を負うべき筋合いではない。

二、懲戒処分および昇給延伸措置の点について

1、原告橋本、同西野関係

≪証拠省略≫を総合すれば、原告橋本は大阪基金業務部業務第三課業務第二係第一班に所属し、前記のとおり全基労大阪支部の支部長であったものであり、また原告西野は同じく業務第五課業務第二係第一班に所属し、前記のとおり同支部の書記長であったものであるところ、いずれも前記処分理由に示されたように、昭和四一年一〇月一五日から同年一二月九日頃までの間に、前記日刊紙の印刷のために、被告の度重なる警告(右原告両名につきそれぞれ計二一回)を受けたにもかかわらず、被告の許可を受けないで自ら大阪基金事務所を使用し、あるいは他の組合員にこれを使用させ、なおこの間前記のとおり原告橋本宅に送り届けられた前記印刷器具類を再び右事務所に持ち込み、右印刷を続け、そのため被告としても職場秩序の維持上そのまま放置することができなくなったところから、就業規則の懲戒に関する規定等を適用して、前記のとおり昭和四一年一二月二三日原告橋本、同西野に対し停職五日間の前記各懲戒処分および三か月間の昇給延伸措置を行なうに至ったものであることを優に肯認できる。

ところで、被告の原告橋本、同西野に対する右各懲戒処分、昇給延伸措置は、以上認定のようなこれが行なわれるに至った経過に照らし、かつその内容、程度等からみて相当であり、これが重きに失し正当な懲戒権の行使の範囲を逸脱しているものということは到底できないから、これを目して同原告らの団結権を侵害し被告の不法行為責任を生ずべき違法な行為とはたやすく認め難い。

2、原告久保関係

(一)、≪証拠省略≫を総合すると、次の事実が認められる。すなわち、原告久保は大阪基金業務部業務第五課業務第二係第一班に所属し、前記のとおり全基労大阪支部の執行委員で、かつ前記日刊紙の編集責任者であったところ、被告主張のとおり昭和四一年三月二六日から同年一〇月一一日までの間いずれも就業時間中にその主張のような各行動に出たため、同原告に対し、所属上司においてその都度注意を与えるとともに、大阪基金幹事長においても三回にわたって書面により警告をした。しかるに、同原告は上司の右注意に対し、ことごとに反撥し、あるいは沈黙を続けるなど反抗的態度をとり、反省の色がみられなかった。そこで被告は、同原告のこれら行動、態度はいずれも就業規則の懲戒規定にいう、被告の従業員たるにふさわしくない非行に該当するとして、諸般の情状を考慮したうえ、同原告に対し前記のとおり同年一二月二三日停職二日間の懲戒処分および三か月間の昇給延伸措置を行なったものである。以上のとおり認められ、右認定に反する証拠はない。

もっとも、≪証拠省略≫によれば、被告主張の昭和四一年七月四日の件、同年同月五日の件、および同年九月三日の件については、原告久保と応対した上司の方にも同原告の感情を刺戟するような言動のあったことが認められないわけではないけれども、これらの事情を考慮にいれてもなお、前段認定事実に徴すれば、被告が同原告に対し、前記のような同原告の度重なる被告の従業員としてふさわしくない各行為につき、当時職場秩序の維持上相当の措置を講ずる必要性の存したことは、これを否定できない。そして、被告の同原告に対する前記懲戒処分、昇給延伸措置の内容、程度の点等からみて、原告橋本、同西野の場合と同じくこれが正当な懲戒権の行使の範囲を逸脱しているものとはたやすく認め難いから、被告のした右処分等を目して、同原告の団結権を侵害する違法な行為としてその不法行為責任を肯認するに由ないものというべきである。

3、原告大野、同山田、同長谷川、同奥田関係

原告らの主張から明らかなように、右原告ら四名は、被告から別段懲戒処分等を受けてはいないものであるところ、他に原告らにおいて、被告が右原告ら四名の団結権を侵害するような行為をしたことをなんら具体的に主張、立証していない本件においては、そもそも被告の右原告ら四名に対する不法行為の成立する余地はないものというべきである。

三、以上の次第であるから、被告は原告らに対し、別段その主張の不法行為責任を負うべきいわれはないものというべきである。もっとも、原告らは、被告の全基労大阪支部に対する前記印刷妨害行為、原告橋本、同西野、同久保に対する前記各懲戒処分、昇給延伸措置は大阪府地方労働委員会の発した本件救済命令によりすでに不当労働行為であることが確定し、被告もその履行を了しているところ、これにより、被告の右印刷妨害等の行為の不法性はすでに内容的にも確定しているのであるから、被告においてもはや右印刷妨害等による不法行為の成立を争うことは許されない旨主張し、なるほど同委員会の発した右救済命令がすでに確定し、その履行を了していることは前述したとおりである。しかしながら、ひとしく使用者による労働者の団結権の侵害といっても、労働組合法七条に規定する不当労働行為の場合と、民法七〇九条以下に規定する不法行為の場合とでは、もとよりそれぞれ制度の目的はもちろん成立の要件も異にしているから、労働者の団結を阻害する使用者の行為につき、不当労働行為が成立し、これが救済命令の対象となるからといって、このことから当然に不法行為の成立も認めなければならないものとは解されない。いわんや、使用者の不当労働行為に対する労働委員会の救済命令は、ほんらい行政機関たる同委員会がかかる不当労働行為におよんだ使用者に対し、労使関係を右行為以前の正常な状態に事実上復帰させるために発する原状回復命令であって、行政処分たる性質を有するものであるから、右命令が確定すれば、もとより使用者においてこれに服従し、右命令どおり履行すべき公法上の義務を負担することにはなるけれども、別段これによって労使間にあらたに実体私法上の効果が生ずるわけのものではない。換言すれば、使用者の行為が労働者の団結権の侵害として不法行為に該当するものであるか否かについては、裁判所において別段労働委員会の救済命令に拘束されることなく、訴訟当事者の主張するところに従い独自にその成否を判断しうるものというべきである。したがって、本件の場合、被告の前記各行為が大阪府地方労働委員会の本件救済命令によって、前記のとおり印刷妨害等を理由に不当労働行為と判断され、かつ右命令がすでに確定し、またその履行を了しているからといって、被告の右各行為につき、不法行為の成立が認められるか否かに関しては、また別個にこれを考察すべきであり(なお、右考察の結果はさきに詳述したとおりである。)、原告らのいうように、右各行為が不法行為に該当することは、もはや争いえないことであるなどと解すべきものではない。したがって、右に反する原告らの前記主張は採用できない。

第三、そうすると、被告の前記各行為が原告らに対する不法行為に該当することに基づいてなされた原告らの本訴請求は、その前提においてすでに理由がないものというべきであるから、その余の損害の点等についていちいち判断するまでもなく失当であって、棄却を免れない。

よって、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九三条一項本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 日高敏夫 裁判官 砂山一郎 窪田正彦)

〈以下省略〉

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